キャッシュフロー計算書(C/F)の概要と分析の目的について説明します
自分の分析手法について解説するシリーズ第5回。
本記事ではキャッシュフロー計算書(以下、CFと記載)の分析の前提として、
・そもそもキャッシュフロー計算書とは何か?
・何故キャッシュフロー計算書を見る必要があるのか?
について説明を行います。
キャッシュフロー計算書(C/F)とは?
キャッシュフロー計算書は何が理由でどれだけ現金が増え、どれだけ現金が減ったのかを表す財務諸表です。
キャッシュフロー計算書(以下、CFと記載)と損益計算書(以下、PLと記載)は、どちらも企業の収益力に関係しますが、「利益(PL)発生のタイミング」と「現金(キャッシュ)が増減するタイミング」は一致しないため、それぞれ違った観点で収益力の裏付けを取るのに使えます。
具体的に、どのようなケースでPLとCFを使い分けるのかは本記事の後ろの方で補足します。
営業/投資/財務キャッシュフローについて
キャッシュフロー計算書には大きく以下の分類があります。
・営業活動によるキャッシュフロー(以下、営業CFと記載)
・投資活動によるキャッシュフロー(以下、投資CFと記載)
・財務活動によるキャッシュフロー(以下、財務CFと記載)
大まかな意味合いとして、
・営業CF・・・本業で儲けた現金の増減
・投資CF・・・設備投資や事業投資による現金の増減
・財務CF・・・借入や増資・配当支払による現金の増減
を表し、一般的には営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスなのが健全なキャッシュフローだと言われています。
フリーキャッシュフロー(FCF)について
フリーキャッシュフロー(以下、FCFと記載)とは、本業で儲けたお金から事業維持に必要なお金を差し引いたお金のことで、以下の計算式で表します。
・FCF=営業CF±投資CF
FCFは他にも色々な計算方法がありますが、基本的にはシンプルな上記計算式を押さえておけば良いかと思います。
キャッシュフロー計算書(C/F)の活用事例
PLとCFの使い分けの事例で、例えば「利益は上がっているけど、実は問題がある」のには、次のようなケースが考えられます。
①売れない在庫がある場合
在庫が増えてもPLには影響しないため、売れない在庫を抱えていてもPL上問題は検知できません。
一方CFを見ると、仕入代金の支払いでお金が減り、売上が上がっていないことでキャッシュフローはマイナスになるため、検知することが可能です。
例えば、商品AとBをそれぞれ100円で仕入れて、商品Aは120円で売れて、商品Bは50円に値下げしないと売れそうにないような場合、
実体としては、AとB合わせて200円で仕入れて、170円でしか売れなさそう
→30円の損失の見込み、
であるところ、財務諸表を見ると、
【PL】売上120円-原価100円=利益20円(商品Aが売れた分)
【BS】在庫100円(商品Bの売れ残り分)
【CF】売上120-仕入200=マイナス80円(現金が減っている)
となり、実態に反してPLでは利益が出ている一方、CFは現金が減っていることが表れています。
現実的には、キャッシュフローがマイナスで在庫が増えていても、それが不良在庫なのか問題なく売れる見込みの在庫なのかは分からないため、CFを見て違和感を感じた場合、より突っ込んだ確認を行うのが望ましいです。
②売上したが資金回収が遅れる、または貸倒が発生する場合
売上を上げても、お金を回収できなければ会社として本当に儲かったとは言えません。
売先が倒産してお金を回収できなければ丸々損になります。(貸し倒れ)
また資金回収の遅れや、そもそも資金繰りが上手くいかないことで、余計な借金や増資が発生したり、最悪の場合、黒字倒産ということもあり得ます。
売上の回収が出来なかった結果、倒産をした例としては江守グループHDがあります。
黒字倒産は不況時の不動産関連が多く、2008年3月期に311億円の利益を出して、その5か月後の2008年8月に倒産をしたアーバンコーポレーション等があります。
おわりに
以上が、キャッシュフロー計算書の概要と、活用事例になります。
次回も引き続きキャッシュフロー計算書について、営業CF・投資CF・財務CFの個人的&具体的な見るポイントを中心に書く予定です。
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