ゲイリー・アントナッチ氏によって書かれ、日本語訳版がパンローリング社より出版されている「ウォール街のモメンタムウォーカー」の感想・レビューです。
2017年10月に同じくパンローリングから出た「ウォール街のモメンタムウォーカー(個別銘柄編)」はタイトル・内容共に似ているところはあますが、全く別の著者によって書かれています。紛らわしい。。。
感想・レビュー
この本で書かれているポイントは概ね以下の通りです。
S&P500と非米国株と米国債の内、過去12ヶ月パフォーマンスが一番よいものに投資することで良いパフォーマンスが挙げられる
この本に書かれていることは非常に参考にはなったのですが、
この考え方は自分の主戦場ではないドル建てかつ、基本右肩上がりのアメリカ市場について書かれていることであり、上げ下げを繰り返している日本市場においてはどうなのだろう?
というのが気になったので以下の通り、検証をしてみました。
本書の考え方(モメンタム)を日本市場に適用すると?
検証の前提
・検証期間は1998年12月~2018年2月の各月末の指標を使用する。
・開始基準日を100として以降のパフォーマンスを算出する。
・バイ&ホールド、モメンタムでのパフォーマンスを比較する。
・バイ&ホールドは開始基準日以降売買せずに保有。
・モメンタムは月末の指標が1年前の指標を下回ったら売却、上回ったら購入を繰り返す。
・税金、配当は考慮しない。
日経平均検証結果
■1998年12月30日 日経平均:13,842.17
■2018年02月28日 日経平均:22,068.24
・バイ&ホールド:+59.43%
・12ヶ月モメンタム:+163.33%
JASDAQ指数検証結果
■1998年12月30日 JASDAQ指数:28.24
■2018年02月28日 JASDAQ指数:182.26
・バイ&ホールド:+545.40%
・12ヶ月モメンタム:+814.77%
検証結果コメント
大きな下げ相場を所々回避しつつ、上げはそれなりにとれているので日経平均もJASDAQ指数もバイ&ホールドよりもパフォーマンスは良かった。
特に日経平均はITバブル崩壊、リーマンショックを含めた暴落を少なからず回避しており、信頼性は高いように感じる。
ちなみに2016年は1月の下げは食らい、2月の下げは回避、その後の米大統領選後の上げを取れずでトータル▲8%程度とバイ&ホールドに負けています。
2017年、2018年はモメンタムの条件でずっと持ちっぱなしになっているので、パフォーマンスは変わらず。
JASDAQ指数はパフォーマンス自体はバイ&ホールドを大きくアウトパフォームしている。
が、要因はリーマンショックをある程度回避したことによるもので、これはライブドアショックによる新興崩れ⇒リーマンの流れがあっての偶然要素が大きく、その前のITバブル崩壊はほぼモロに受けていることもあり、下げ速度の速い新興市場では過度の信用は出来ないように感じた。
ということで、本書に書かれたモメンタムの考え方(12ヶ月前の株価と現株価との比較で相場見通しを測る)は、日経平均(大型)では使えるけど、JASDAQ(新興)では過度の信頼は出来ないのではないかというのが個人的な結論になります。
今後相場を続ける限り、繰り返し来るであろう暴落クラスの下げの回避手段の一つになり得るので、本書の考え方を知っておくのはプラスになると思いました。
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